しくじり飲食店 シリーズ  古民家カフェ

ビジネス

コロナ禍において厳しい状況が続く飲食店

飲食店経営はさまざまなハードルが立ち塞がる
多大なコストから薄利多売になりやすいし、
環境の変化で食材の高騰も日常的に起こるし、
次々とブームがやって来ては去るめまぐるしい業界。
損益分岐点も他業種と比べても圧倒的に高い。


しかしそんな中、一握りだが大きな利益を出し、ドリームを掴む者もいる。

これは成功を掴んだ人達の話ではなく、

ちょっとしたボタンの掛け違い、
安易なイメージで飛び込んでしまった人
こんなハズではと当てが外れてしまった人
だったりと色々な事情で
しくじってしまったお店の実例


今後、飲食店経営をしたい人に反面教師的な役割で少しでも役に立てれば
いいなと思います。

第一話


置き去りにしちゃったカフェ


そのお店は2008年7月
友人達と日帰り旅行をした時に出会った


私達は朝6時に地元の駅に集合し、山奥の秘境地にある湖を求めて
電車を乗り継ぎ、目的地に向かった。

出発から3時間程たち、最後の乗り継ぎの電車まで空き時間があったので
周辺を探索することにした。

既に周りは山に囲まれており、民家もほとんどない静かな大自然だ

売店らしきお店が1店舗あったが、座るところも無かった為、入らなかった。

歩いているとお店らしき小さな立て看板を発見した為、そこを目指した。


そのお店は周辺の土地より高い所に建てられており、少々疲れました。

イメージ画像

目の前に現れたお店は山奥の休憩所といった佇まいで、全て木造りで作られた
年季の入ったお店で、これぞ日本の古き良き魅力が詰まった純和風のお店で、
お庭のお手入れもしっかりされていました。

お店の規模は入れれば30人近く入りそうな大きな作りになっていましたが、
あえてお客さんにゆっくり寛いでもらう為に、10席程度の席しか用意されていなく
脚をくずしたり、横になったりすることも出来ました。


その日は平日だった為、ほとんど来客はないようでしたが、土日は遠方からの来客もあり、結構賑わうようです。

お店はBGMを一切かけておらず、あえて自然の音をBGMとしているそうです。
鳥の鳴き声や風の音が聴こえて来ます。
時が止まったかのような静かな時間が流れていました。


メニューは飲み物(お茶のみ)とお蕎麦、和菓子(お団子、お饅頭)と
シンプルの極みで非常に渋い構成になっていましたが、
期待や想像にぴったりのところを突いてきて、ついつい気持ちも高揚してきます。

お店としてはお蕎麦に力を入れていたようでしたが、ここから先の目的地で
食べたいものがあった為、食べることが出来なかったのは非常に残念でしたが、
お団子とお茶が本当に美味しかったです。

お店から見える壮大な景色を眺め、味わうお団子は最高でした。

私達はすっかりこのお店が大好きになりました。

旅から帰った後もずっとこのお店のことは忘れることはありませんでした。


時は過ぎ、2016年


私は仕事の関係でこの近くを通ることになりました。
現在地からナビで見ると7㎞とそう遠くない距離で、
時間にも余裕があった為、興味本位で再訪することにしたのです。

この時点では何も感じませんでしたが、お店の前にたどり着いた時に、
全く別のお店に変わったことがハッキリわかりました。

今流行りのリノベーションを施したお店で、正によく聞く古民家風カフェです。

イラストレーターや業者に頼んだのか、新しいお店のロゴがあらゆる場所に刻まれてました。

内装は真っ白なデザインに施してあったり、そのまま昔のままにしてある所もあったりと
いいところ取りしたかったのでしょうか?
明るいのか暗いのかよくわからない色使いになっていました。

ショーケースにはケーキが少し並んでいました。

メニューには驚きました。

日替わりワンプレートランチ、カレー、ハンバーグ、ホットドッグ、
パンケーキ、ケーキ各種 
などなど実に多彩です。

流行りのラテアートも簡単なものですが、ありました。

と言った完全に洋風なカフェメニューのラインナップの中にポツンと蕎麦が…

キッズスペースも増えていました。
キッズスペースを囲むように席が配置されています。

BGMはクラブミュージックが流れています。

ペットも入店可になっていました。

店内やたらに英語表記が目につきます。

お庭は草が生い茂っていて、半分放置状態ですが、
代わりに展望スポットが用意され見晴らしの良い場所に椅子が設置されていました。


見事な変貌ぶりに驚きました。
以前訪れた時とは全く趣が違っていました。
そう感じたのは和から洋へとまるで対象的なものへと変化させた所にあるでしょう。

この再訪から1年後、このお店は残念ながら廃業となりました。

近隣の方達の情報によるとやはり経営不振が大元の理由だそうです。


私から見ても経営不振に繋がる原因は間違いなくあります。

しくじりポイント 原因

ターゲット、消費者の需要を分析していない点

リノベーションに辺り、和なのか洋なのか、利用客が認識しずらい所にあります。
現代では和と洋を上手く調和させた作りもありおかしな事ではないと思いますが、
このお店の作りは調和というより、どれも色んなものが主張しており、大きな軸が
感じられない点が原因にあります。

お客さんが利用する所だけ、白を配色した洋風な作りにして、見えない所は前のまんま、
置物もそのままだったりします。
店内は英語表記のものが目立つのに、外には日本語で筆書きされた旗が立っていたりと
ちぐはぐ感が否めません。

利用客を子育て中の人に限定しすぎ

店内の中心にキッズスペースを配置して、それを囲うようにして
ご飯を食べたいと思う人がどれだけいるのでしょうか。

ペット可

これは悪いことでは決してありませんが、ペットが入店して他のお客さんに
迷惑がかからないよう、ペット連れのお客様専用の席など何らかの工夫は欲しいです。
人間同様そのまま小上がりの席に上がって走り回られたら落ち着きませんよね。

メニュー

メニューは完全にカフェになり洋にシフトチェンジしたかと思いきや、蕎麦が申し訳程度に
ポツンとラインナップされています。
これでは蕎麦も魅力的に映らないし、売りのカフェメニューの存在意義も否定することに
なり得ません。

メニューが多すぎる

やりたいことが多くて全部知ってもらいたい気持ちはわからないでもないです。

自分の腕やポテンシャルを披露したくなる気持ちもあるでしょう。

逆に何が当たるかわからない、確固たる自信のあるメニューが無いという不安から
メニューを多くすると言う事例もよくあることです。

いずれにしてもメニューは多ければ良いという考えは捨てたほうが良いです。

決めたメニュー、看板にしたいメニューをしっかり決めてそれに注力することは
一つに集中し、突き詰めることになります。
それが味の向上だけではなく、そのメニューをより活かす為に、あらゆる工夫をこらし
お店全体にまで目を向けるキッカケに繋がってきます。

メニューが多いと当然の如く、仕込み時間が増えますし、売れ残った際の
ロスも多くなります。

コンセプトがない

明確なコンセプトを立てずに走り出してしまったのでしょう。

・オシャレなお店にしたい
・若い世代に利用してもらいたい
・SNSに映えるお店にしたい

素晴らしいことですが、これはコンセプトとは言えません。
個人的な趣味嗜好の段階です。

・このお店があることでどんなお客さんが来店し、どんな貢献ができるか?

・この土地にはどんなお客様がいるのか?
 潜在的なお客さんの想定

そしてこのお店に当てはめれば
今までのお客さんはどうしてお店を利用していたのか?
どんな需要があったのか?
前のお店の強み、弱みもしっかり把握しないといけません。

・ただこれがやりたいから

・これが流行るでしょ!

・こっちのほうが絶対オシャレじゃん!

このような単純な考えではいずれ立ち行かなくなるのも当然です。

立地的な特徴をよく知り、そしてそれを活かして欲しいです。

それを把握してようやくコンセプトを掲げましょう。

BGMは案外バカに出来ません

クラブミュージックこれは完全にお店の方の個人的な嗜好なのでしょう。

この音楽が1番心地よいと思うのでしょうが、商業目的なのですから、
ある程度バランス調和を考えたほうが良いです。

個人的な趣味を完全に押し出しているお店で流行ってるお店もありますが、
このお店に関しては1番の強みがロケーションです。

この大自然での素晴らしい景色を堪能できる立地はどれだけ莫大な資金力を持ってしても
人の手で易々と演出できるものではありません。

強みをしっかり理解しましょう。

クリンリネス

見える所だけ綺麗にすれば良いと思ってはいけません。
お客さんは本当に目ざとく色んなところに気づいてしまうのです。

この新しいお店に関して言えば、見える所も手入れや掃除されていない
所が多々ありました。

以前は完璧では無いものの、庭もしっかり手入れしていました。
今は草が生い茂って放置されています。

見事な庭も以前はこのお店の雰囲気や風情を醸し出す素晴らしい存在でしたが、
今は切り捨てたのでしょうか?
忙しくて手が回らなかったのでしょうか?

いずれにしてもこのお店はお店に入る前から既に演出が始まっています。

このアドバンテージを経営者が理解出来ていないのは残念です。

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最後に

いろいろ書き連ねましたが、短く集約すると、
自分達のやりたいが優先しすぎてお客さんとの間に大きな乖離
生まれてしまったと言うことです。

もちろんやりたいことがあるのは大事です。
そこからお客さんの目線とやりたいことを実現する為のすり合わせが必要です。

自分目線だけではいけませんし、お客さん目線だけでも駄目なわけです。

前経営者は息子夫婦に託したようで、それで好きにやらせていたのかもしれません
若い感性からすればこんな古臭いやりかた今の時代に合っていないと考えていたかも
しれませんが、経営はそんなに容易いものではないと言うことです。

ここまでありがとうございました!
客観的に見れば、そりゃ潰れるわと思う方もいるかもしれませんが、
案外自分自身が経営する立場になると陥ってしまうのが現実なのです。

そこが経営の難しいところなのです。

このケースから何か一つでも学びになる手助けになればうれしいです。


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ではまた!

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